サンプル中にDNAはどれだけ存在するか?
PCRではDNAの量を電気泳動のバンドの濃さで表しますが、正確な数値は分かりません。リアルタイムPCRは、サンプル間の相対値で定量を行うため検量線が必要となり、またPCR増幅効率の影響を受けます。DNA研究が進んでいるとは言え、実際には定性か相対定量にとどまっているのが実情です。
それに対し、絶対定量ができる方法として期待されているのが「デジタルPCR」です。PCR、リアルタイムPCRに続く「第3のPCR」と言われている技術です。デジタルPCR装置をいち早く投入しているバイオ・ラッド ラボラトリーズ(東京都品川区)に話を聞きました。
今回紹介する技術と製品
デジタルPCRシステム
「QX200 Droplet Digital PCR システム」
QX200 Droplet Digital PCR (ddPCR™) システムは、EvaGreen またはプローブを用いたデジタル PCR アプリケーションに対応した、ターゲット DNA または RNA 分子の絶対定量を実現します。
この記事で紹介した製品の関連資料がダウンロードできます。
リアルタイムPCRを超える高精度!絶対数値を算出できるデジタルPCR
マーケティング部
上原 輝彦 プロダクトマネージャー
デジタルPCRは、リアルタイムPCRをはるかに超える高精度で絶対的な定量を行える技術です。
デジタルPCRは、サンプルDNAを2万の小部屋に分けて格納し、PCR増幅を行います。すると、ターゲットDNAが入っている小部屋は光り、入っていない小部屋は変化しません。2万のうち光っている部屋の数をカウントすることでサンプル中の濃度を絶対的な数値として出すことができるという原理です。
データは、小部屋のターゲットDNAのアリ/ナシで判断することから、それがデジタル信号の1/0と同じなので「デジタルPCR」と呼ばれています。
PCRは電気泳動のバンドの濃さによって濃度を推測するしかありません。リアルタイムPCRは、すでに濃度が分かっている標準品からの検量線とサンプルが示した検量線との差で数値を求めます。それに対しデジタルPCRなら、絶対的な数値を出すことができます。
1回の実験で96サンプル同時に測定可能!論文数は100近く。Cellなど有名雑誌にも
当社は2年前からデジタルPCRに取り組み、現在「Droplet Digital PCRシステム」を展開しています。
「Droplet Digital PCRシステム」は、小部屋を作る「Droplet Generator」と、小部屋内の蛍光を測定する「Droplet Reader」、PCRを行うサーマルサイクラーで構成されます。
サンプルを専用消耗品にロードした後、Droplet Generatorにセットして「ドロップレット」と呼ばれる小部屋に収納。それからサーマルサイクラーでPCRを行った後、Droplet Readerでドロップレットの蛍光を測定し、データを解析して数値を出します。
他社のデジタルPCR装置は1回あたり1サンプルや多くても8サンプルしか測定できませんが、当社の製品は1回の実験で96サンプル測ることができます。
デジタルPCRはまだこれからの技術で、認知度は高いとは言えません。まだ主流はリアルタイムPCRですが、デジタルPCR関連の論文はすでに100に迫っています。いまユーザーにデータを出していただいているところで、「Cell」や「Nature」といった著名な雑誌でも取り上げられており、これから急速に浸透していくと思います。