「数センチ角程度の、ある特定部分だけを冷却したい」「0.1℃単位の超精密な温度管理が必要」「ピンポイントで超精密な冷却がしたい」温度管理の技術はいくつもありますが、ごく小さな箇所を0.1℃単位で温度調節するのであれば「ペルチェ素子」を使うのが正解。板状の半導体素子で、電気を流すと片面が冷え、もう片面が発熱する技術です。
日本ブロアー(東京都千代田区)の『BABY SAMOL(ベビーサモル)』は、500円玉より少し大きいくらいの超小型の冷却ユニット。電源につなぐだけで使え、電子機器の発熱対策や、温度調節用として試験機や分析機器などに組み込まれています。詳細を聞きました。(聞き手:イプロス編集部)
今回紹介する技術と製品
超小型・軽量サーモクーラー 『BABY SAMOL』
『BABY SAMOL』は手乗りサイズのサーモ・クーラーです。外気20℃の環境下でも-5℃を作って凍らせることができます。完全電子部品なので、高精度の温度調節にも最適です。
この記事で紹介した製品の関連資料がダウンロードできます。
電源につなぐだけ!ペルチェ素子を使った冷却・恒温ユニット
金子 一光 社長
――『BABY SAMOL』とはどんな製品ですか?
「SAMOL」は、電源につなぐだけで使うことができる、ペルチェ素子を使った電子式の冷却装置です。
ペルチェ素子を冷却用に使いたいというニーズは高かったのですが、ペルチェ素子は単体で販売されていることが多く、実際に使う際には電源や放熱装置などの開発設計が必要で手間がかかっていました。SAMOLはそれらをすべて1ユニット化し、電源につなぐだけで利用できます。制御盤や電子機器、理化学機器の冷却用に広く使われています。近年の機器の小型化・精密化にともなって開発したのが、手に乗る超小型サイズの『BABY SAMOL』です。
手に乗るサイズの超小型 & 0.1℃単位の精密な温度制御
500円玉より少し大きな超小型タイプ
――どんな特長があるのですか?
サイズの小ささと、精密な温度調節が最大の特長です。
『BABY SAMOL』は54×47×27mm、90gしかありません。同じ冷却技術としてコンプレッサを使ったクーラーがありますが、ここまで小さくすることは不可能です。『BABY SAMOL』なら今より小さくすることもできます。
サイズが小さい上、向きを気にせず取り付けられるので機器への組込みにとても便利です。コンプレッサは横や逆さにして取り付けられませんが、『BABY SAMOL』は電子機器なので向きは関係なく性能を発揮します。ファンしか駆動部分がないので壊れにくく、信頼性という部分でも優れています。
また、0.1℃単位で精密な温度調節が可能です。電気を流せば冷え、止めれば温まり、その具合は電圧でコントロールできます。ある一定温度に留めておくことも得意で、冷却するだけでなく、恒温用途としても、とても有益です。
――実際にどんな用途で使われていますか?
電子機器やセンサの冷却などクーラーとしての用途と、精密な温度調節が必要な恒温ユニットとしての用途に大別できます。特に後者は、食品分野の温度管理、試薬や血液、薬品等の医療・医薬品分野、電子冷却の実験をする教育・研究分野などで使われています。少しの温度の違いが品質や結果を左右し、それを防いで安定化させるために採用されることが多くあります。
特注品・オーダーメイドにも対応。宇宙や航空、船舶など特殊用途のカスタムも
『BABY SAMOL』を含むSAMOLシリーズは、幅広い標準品を用意していますが、実際にはお客様の注文の多くは特注品オーダーメイドです。
例えば、特殊船舶に搭載する通信機向けの冷却装置や、飛行機や人工衛星の部品の冷却用などのカスタム品を特別に設計して納品しました。また、大型加速器の装置の冷却用にも使われており、最先端の実験設備などからも引き合いが来ている状況です。
ペルチェ素子自体は1800年代に開発されたものですが、応用範囲はまだあります。機器の多くが小型化・精密化するなかで、そこでの温度管理に『BABY SAMOL』は最適です。多くの方に使っていただきたいと思っています。