食品工場をはじめ製造現場などで使われる「殺菌水」。その一種に、強力な殺菌力を発揮する「炭酸次亜水」があります。炭酸次亜水製造装置を製造、販売するエコノス・ジャパンは、持ち運びができる「小型炭酸次亜水製造装置」を2017年11月に製品化しました。同製品を開発した背景やメリットについて、話を伺いました。
今回紹介する技術と製品
『小型炭酸次亜水製造装置』
「小型炭酸次亜水製造装置」は、水道の蛇口とAC100V電源があれば、強力な殺菌水を手軽に製造できる装置です。キャスター付きの可搬タイプもあり、バッテリーを搭載することで電源が無い場所でも使用可能。炭酸ガス中和方式のため、取り扱いが安全で、ランニングコストが安いことも特長です。現在、デモ機の無料貸出も受付中。
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強力な殺菌水を「安全かつ低コスト」に製造する装置
建物の清掃、食品機械および関連備品の洗浄で活躍
代表取締役社長 伏見民生 氏
当社では、「熱・光・水をツールとしたコア技術」をベースに、お客様のニーズに合わせた殺菌装置および殺菌水製造装置の製造・販売を手掛けています。具体的には、熱は過熱蒸気、光はパルス光、殺菌水は炭酸ガス中和方式です。2014年にはスイス・comet社と提携し、光による殺菌技術の上位と位置付けて電子線照射装置のラボ機を導入、より強力な滅菌レベルの装置開発や樹脂などの素材の分子構造を変える改質など新分野の研究にも取り組み続けています。
今回お話しする、炭酸次亜水製造装置は強力な殺菌水の一種である「炭酸次亜水」を作り出す装置です。当社では8年前に炭酸次亜水製造装置を製品化し、主に食品や容器の内面の殺菌・洗浄などでご利用いただいております。
殺菌水の製造方式としては、当社の採用する炭酸ガス中和方式のほか、塩酸中和方式や電気分解方式などが知られています。炭酸ガス中和方式は、水と次亜塩素酸ソーダに炭酸ガスを溶解させて殺菌水を造ります。そのため、塩素ガスなどの有毒ガスが発生せず、金属腐食も少ないため機器の殺菌にも安心して使用いただけます。また、電気分解方式で必要な電解槽の電極交換も不要で、製造コストも他の方式に比べ低く抑えられます。
6月に開催された「FOOMA JAPAN 2017(国際食品工業展)」では、従来は他の方式を採用していたメーカーも炭酸ガス中和方式に切り替えるなど、炭酸ガス中和方式の装置が数多く出展されていて、この方式の評価が業界内で高まりつつあることを実感しました。
小型・軽量・可搬式で用途拡大。
操作も簡単で使いやすい
当社で従来から製造、販売している炭酸次亜水製造装置はHACCP対応、トレーサビリティなど機能が充実しています。しかし、私は以前から“シンプルな装置を開発すれば、より多くの場所や用途で活用いただけるのではないか”と考えていました。
そこで2017年11月に製品化したのが、従来の装置をコンパクトにした「小型炭酸次亜水製造装置(以下、小型モデル)」です。この小型モデルは“既存装置の小型・軽量・簡易型”をテーマに開発したもので、水道の蛇口とAC100V電源さえあれば殺菌水を造ることができます。据え置き式に加え、キャスターのついた可搬式も用意しており、バッテリーを搭載すれば電源の無い場所でも使用可能です。また、操作するボタンも少なく、誰でも簡単に使っていただけます。
製品化に着手したきっかけは、2017年初頭に建物の設備管理を手掛ける企業を訪問してヒアリングをしたことです。その企業では、トイレの清掃に殺菌水を使用していたのですが、大規模な施設では「装置を持ち運びできれば、利便性が上がる」といった意見をいただきました。また、担当者の方は炭酸ガス中和方式のメリットも理解されていて、“小型かつ可搬式の炭酸次亜水製造装置”を実現できれば、商機は十分あると確信を得ました。
開発においては、ヒアリングの内容をベースに、従来製品から余分な機能を外していきました。殺菌水の濃度を均一にする技術など、従来装置で培った経験を活かすことができたため、サイズ面ではそこまで苦労しませんでしたが、軽量化は大変でした。加工性や耐久性の観点から、装置自体の材料に厚いステンレスを使用しているためどうしても全体の重量が重くなります。2017年10月の「JAPAN PACK 2017(日本国際包装機械展)」に出展したプロトタイプは、キャスター込みで19kgありましたが、その後14kgまで軽量化できました。今後さらに改良を重ね、10kgを目指したいと考えています。
「より清潔な施設」を実現し、企業のイメージアップに貢献
新領域でのチャレンジに向け協力会社も募集
ビルのトイレや介護施設など、 同社にとって新しい分野での活用が見込まれる
小型モデルは、従来の炭酸次亜水製造装置を使われている方々に別の用途でお応えすることはもとより、ビルや交通機関、病院・介護施設などで新しいニーズを見込んでいます。特に、大型商業施設や駅、サービスエリアなどでは、トイレなどをより清潔に保つことで、顧客満足度の向上や企業のイメージアップに貢献します。
しかし、当社にとっては、これまでお取引が無かった分野の企業がお客様となりますので、まだ商流の全体を把握しきれていないのが現状です。ビル管理を例にすると、ビルのオーナー様のご支援を賜わり、建物や設備の管理会社を訪ねながら、実際に購入し使用するみなさまと知り合うことになります。業種によって商流も異なり、売り込み先を探しているところです。
同時に、販売形態も増やす必要があると考えています。当社はこれまでエンドユーザーに直接、装置を販売してきましたが、従来は接点がなかった業界に対し効率的にアプローチするために、販売パートナーを求め協業することも視野に入れています。そうなると、リースやレンタルでの製品提供など、ビジネスモデルも増やす必要があるかもしれません。もし、ビル管理や掃除用具・調理器具・包装資材などの卸売を手掛けられていて、当社の製品の販売に少しでもご興味がありましたら、お気軽にお声がけください。