活性酸素の働きを抑え、生活習慣病の予防や老化防止に役立つとされる“抗酸化作用”。代表的な抗酸化物質の一つに、ポリフェノールがあります。佃煮「ふじっ子煮」や加工煮豆「おまめさん」などで知られるフジッコ(兵庫県・神戸市)は、黒大豆由来のポリフェノールを豊富に含有する食品素材『クロノケア』を展開。今回、同製品の特性や今後の展開について話を聞きました。
今回紹介する技術と製品
黒大豆ポリフェノール高含有の粉末素材。生活習慣病予防を期待できる作用が多数
『クロノケア』は、黒大豆の種皮から抽出したポリフェノールを豊富に含む粉末素材です。高い抗酸化力を発揮し、脂肪やアルコールの代謝促進、血流改善など様々な効果が期待できます。水溶性が高く、体内吸収性に優れているのも特長。熱やpHの変化に強いため、飲料やゼリーといった食品に容易に添加できます。健康食品やサプリメントはもちろん、食品、化粧品など幅広い展開が可能です。
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半世紀にわたる大豆の基礎研究をもとに粉末素材を開発
イソフラボンに続き、黒大豆の種皮に着目
メディア・フードサプライ販売部
ヘルスケアフードグループ リーダー
高木 健二 氏
消費者向けの惣菜、昆布・豆製品で知られるフジッコですが、基礎研究から生まれた業務用の食品素材も取り扱っています。当社は、1960年に第1号商品「とろろ昆布」を発売し、1976年に「おまめさん」を開発しました。その流れと同様、素材分野でも、カリウムの含有量が豊富な「昆布ミネラル」に始まり、イソフラボンを高濃度に含む「フジフラボン」、そして『クロノケア』の順に市場へ送り出していきました。
イソフラボンは、骨粗しょう症の予防や更年期障害の緩和、美容効果などが期待できると言われている、ポリフェノールの一種です。当社では1997年にその分離・抽出に成功し、水溶化と、独特の“えぐみ”を解消する技術を確立。こうして誕生したのが「フジフラボン」です。そして、この次に着目したのが、黒大豆の効能でした。
日本では、おせち料理の黒豆のイメージが強いかと思いますが、古来、漢方薬の世界では“黒豆衣(こくずい)”と呼ばれる生薬として利用されてきました。黒や黄・青・白など、どの色の大豆も中身の成分は全て同じです。従って、唯一成分が異なる種皮が研究対象となりました。
黒大豆から高抗酸化力の源を分離・抽出する技術を確立
水溶性が高く、体内への吸収性も抜群
『クロノケア』(左)と、その原料となる黒大豆(右)
そして、黒大豆の種皮から高い抗酸化力の源となる成分を突き止めて、分離・抽出を実現、2007年に『クロノケア』として商品化しました。
『クロノケア』には、全成分の58%という高含有率でポリフェノールが存在しています。中でも全体の35~40%を占める「プロシアニジン」は、強力な抗酸化物質として知られるポリフェノールです。一般的にプロシアニジンは重合度が低いほど水に溶けやすくなります。『クロノケア』には低重合のプロシアニジンが多く含まれているため、優れた体内吸収性を発揮できます。
発売当初は、ちょうど“メタボリックシンドローム(内蔵脂肪性症候群)”という言葉が浸透し始めた頃ということもあり、メタボ対策の素材として売り出していきました。その後も研究を重ね、2009年には黒大豆による血糖値の抑制効果を確認 、翌2010年には生体内抗酸化作用を実証しました。このほかにも、むくみや血管内皮機能の改善効果など、黒大豆の種皮が持つ力を次々と明らかにしています。
また、他の物質と組み合わせることで相乗効果を得られることもわかっています。例えば、『クロノケア』だけでもアルコール代謝の促進効果を期待できますが、しじみなどに含まれ、同じ効果を持つ物質として馴染みのある「オルニチン」と掛け合わせる実験を行いました。このように、プラスアルファの素材として活用いただけるのも、お伝えしたいポイントの一つです。
サプリ類に加え、一般食品での採用拡大に期待
機能性表示への対応など提案力向上に注力
他のポリフェノールと水溶性を比較したグラフ(左)と、
オルニチンと組み合わせたときのアルコール代謝促進効果を示したグラフ(右)※フジッコ調べ
これまでに『クロノケア』が採用されたジャンルは、サプリメントや健康食品が中心でした。今後は、ゼリーや飲料など一般食品で採用拡大を進めるのが目標です。水溶性が高く、食品への添加がしやすいという特性は、開発面でアピールポイントになると確信しています。
そして、さらなる差別化を図るため、機能性表示への対応に向けた準備を進めています。既に対応を済ませた「フジフラボン」では、「丈夫な骨を維持したい方に適した食品」などといったキャッチコピーをお客様に提案しています。『クロノケア』についても、同様にして訴求力を高める狙いです。消費者庁への届け出も当社でサポート可能ですので、一緒に商品開発に取り組んでいけたらと思います。
ポリフェノールを含む商品の開発を検討する際に、原材料として『クロノケア』を選択肢に挙げていただける場面を増やしていければ、と考えています。そのためにも、黒大豆の効能をさらに多くの方に知っていただけるような取り組みを今後も進めていきたいですね。