製薬業界でトレンドとなっている高薬理活性医薬品の研究開発。わずかな量でも人体に影響を及ぼす物質を扱うため、封じ込め(コンテインメント)には万全の対策が必要です。遠心分離機の老舗メーカー、松本機械販売ではコンテインメント専用遠心分離機を開発。OELレベル0.1μg/m3にも対応可能な高い安全性を確保しつつ、作業効率の大幅な向上を実現しました。今回はそんな同社の製品について話を聞きました。
今回紹介する技術と製品
コンテインメント専用型遠心分離機
『i-CONTE(アイコンテ)』
高薬理活性医薬品などを扱う現場では、封じ込め(コンテインメント)は最重要課題のひとつ。『アイコンテ』は、コンテインメントに特化した遠心分離機。高いレベルの封じ込め性能でありながら、大幅な作業効率アップに貢献します。従来使用されてきた加圧濾過乾燥機で24時間以上かかっていた作業をたったの5分程度に短縮した事例もあるなど、業界で注目が集まっている装置です。
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限りなく完璧に近い「封じ込め」で
高薬理活性医薬品を扱う製薬メーカーのニーズに応える
代表取締役 知野 知華 氏
当社は1938年に創業した遠心分離機メーカーです。創業期は飛行機のプロペラなど軍需製品の製造を行っていましたが、その技術を生かして戦後には洗濯機の修理なども行っていました。そこへたまたま大手製薬メーカーの方に「遠心分離機の修理もできないか?」と相談されたことが今の事業のきっかけとなっています。
それ以来、製薬メーカーを中心に様々な業界に遠心分離機を提供してきました。当社は「こんなことできないか?」というお客さまの要望にとことん向きあって製品を開発しています。
最近、製薬業界ではわずかな量でも強い薬効を持つ「高薬理活性医薬品」の製造がひとつのトレンドになっています。そこで問題になるのが、物質の「封じ込め」です。微量でも人体に影響を及ぼす可能性があるため、製造プロセスにおいてはどこのメーカーも封じ込めに細心の注意を払っています。
24時間以上かかる作業を5分に短縮!
コンテインメント専用遠心分離機『i-CONTE(アイコンテ)』
アイコンテ(動画)
一般的に高薬理活性物質を扱う場合、封じ込めの性能に優れた加圧濾過乾燥機が使用されます。しかし、加圧濾過乾燥機は圧力をかけながら徐々に濾過していく仕組みのため、作業に膨大な時間がかかるというのが課題でした。
製薬メーカーが直面するそんな課題を受けて、当社ではコンテインメント専用遠心分離機『i-CONTE(アイコンテ)』を開発しました。アイソレーター(グローブボックス)内に遠心分離機を格納し、物質の封じ込めと作業時間の短縮を実現しています。OELレベル0.1~100μg/m3まで、レベルに合わせたアイソレータ―を搭載可能です。このようなコンテインメント(封じ込め)に特化した遠心分離機は業界でも唯一※かと思います。
まだリリースしてから数ヵ月ですが、実際に利用した企業では従来の加圧濾過乾燥機で24時間以上の時間を要していた工程が最短5分程度に短縮できた事例などもでてきています。オペレーターと物質が接触する時間を大幅に短縮できるので、リスク軽減にもつながりました。
※2016年12月現在
結晶を破砕することなく全量回収を実現!
さらに洗浄まで全自動の遠心分離機『FLOW(フロー)』
『フロー』実液テストの様子
当社では、お客様の要望を断ることはありません。アイコンテはそんな当社の姿勢が結実した一例といえます。ほかにも、全量回収型遠心分離機『フロー』は高価な材料を扱うお客様の声をもとに開発しました。
一般的な遠心分離機では、結晶の掻き取り装置と濾布の間に安全を確保するための隙間を設ける必要があります。そのため、濾布についた結晶を全て回収するのは不可能でした。回収できなかった結晶がロスとなるうえに、濾布につまった結晶が濾過抵抗となり、どんどん濾過効率が落ちてしまいます。
フローはそんな課題を一掃しました。独自開発の機構により、結晶を破砕することなく全量回収が可能です。さらに、給液から排出、機械内部の洗浄まで全自動で行うので物質が人の手に触れることがなく、作業効率と安全性を飛躍的に向上します。
また、加圧仕様となっていることも大きな特長です。結晶を加圧することで含水分を軽減し、乾燥効率を向上させます。濾布からのスラリー漏れもなく、確実なケーキ洗浄も可能です。処理物質のロスを限りなくゼロに近づけます。
難しい条件でこそ力を発揮する「技術の松本」であり続ける
大学との共同研究も進む
当社のお客様には、高価な材料を扱っていたり、未知の物質を開発している企業様がたくさんいらっしゃいます。これは、創業期から「断らない」「諦めない」「投げ出さない」精神でハイスペックな装置を数多く提供してきたひとつの結果です。
“分離濾過”の分野で今までできなかったことが可能になると、様々な分野で研究開発のスピードが向上します。それは技術革新、ひいては社会の豊かさにつながるため、当社が担う責任は決して小さくありません。これからもそんな会社であり続けるために、大学や他社との共同研究・開発にも積極的に取り組んでいます。
分離濾過でお悩みのことがあれば、ぜひ当社にお声かけ下さい。