「脱泡しながら」液移送!高自吸力の非接触型2軸スクリューポンプ
掲載開始日:2016-12-05 00:00:00.0
生産プロセスにおいて、高粘度液を移送する場合は自吸力に優れた“接触式ポンプ”が多く使われてきました。しかし、大きな課題となっていたのが“部品同士の接触によるコンタミの発生”や“高いランニングコスト”。伏虎金属工業(和歌山市)では、それらの課題を一掃。呼び水不要で-10mの高自吸力を実現した“非接触式”2軸スクリューポンプの開発に成功しました。その後も「脱泡機能付き」や「異質液の混合移送」など、生産効率の向上に大きく貢献する製品を次々にリリースしています。独自の特色をもつ製品の秘密に迫りました。
今回紹介する技術と製品
脱泡機能付2軸スクリューポンプ
デフォーミングポンプ
伏虎金属工業は、スクリュー同士が“非接触”の2軸スクリューポンプを開発。摩耗粉(テフロン)によるコンタミを解消し、呼び水不要(完全ドライ)でありながら高い自吸力を実現。さらに、脱泡機能付きの『デフォーミングポンプ』は独自の構造で、液中の気泡を除去しながら移送可能です。気泡を除去することで、食品や薬品、化粧品などの製造ラインにおける品質劣化や成形時の不良を抑えます。
この記事で紹介した製品の関連資料がダウンロードできます。
「接触するから摩耗する」という常識を変える。
ターニングポイントとなった“非接触型“スクリューポンプ
伏虎金属工業 代表取締役 前田 寛二 氏
当社は1962年に和歌山市で創業して以来、50年以上にわたりポンプの専門メーカーとして事業を展開してきました。開発・製造しているポンプは、どれもオリジナリティが強く、他のメーカーでは対応できないような顧客のニーズにも応える製品を揃えていると自負しています。
創業後しばらくは、化学工場などで使用される『ラジアルベーンポンプ』を主力としていました。しかし、ベーンポンプにはどうしても解決できない課題があります。それは構造上発生する、部品同士の接触による“摩耗”です。そこで発生した摩耗粉(テフロン)が液中に混入するリスクがあるため、衛生管理が厳しい食品の製造ラインなどでは不安視されることがありました。
転機となったのは、十数年前。『スクリューポンプ』の開発に着手したことです。それまで、ベーンポンプの製造が主だったため、スクリューの設計と製造には非常に苦労しました。当時58歳だった私が一からCADを学び、スクリューの設計、試作を四苦八苦して繰り返したほどです。開発期間も3年を要しました。しかし、このスクリューポンプの開発が、当社の製品の特色をぐっと増し、製品ラインアップの拡大につながることになったのです。
誕生!「文句のつけようがない」FUKKOの2軸スクリューポンプ
呼び水不要で高自吸!3,600rpmの高速回転でスラリーも一切問題なし!
『FUKKO 2軸スクリューポンプ』の特長
ようやく開発に成功した『2軸スクリューポンプ』。一番の特長は、2つのスクリューが“非接触”で回転することです。摩耗による金属粉が一切発生せず、異物混入の恐れがありません。また、完全自吸式のため、呼び水は一切不要。長時間の空運転による故障事例は未だ1例も発生しておりません。
もう一つの大きな特長はスクリューの回転速度。低速回転から高速回転(最高3,600rpm)し、低粘度液から高粘度液までこの一台でパワフルに移送できます。さらに、特性上心配される“固形物の破壊” “撹拌による液体の変質” “脈動”などいずれの課題も解消しています。
とある酒類メーカーでは、移送する液体に珪藻土を含んでいたため、ポンプの摩耗が激しく、半年に一回は交換が必要な状態でした。それが当社のポンプに代えたところ、5年間交換なしで稼働。大幅なコスト削減につながりました。大変喜んでくださった担当の方から、「このポンプは文句のつけようがありません」とお褒めいただいたときには、大変嬉しかったのを覚えています。
脱泡工程不要でコストダウンを実現!品質向上に貢献するポンプ
『脱泡機能付き2軸スクリューポンプ』
『デフォーミングポンプ/脱泡機能付き2軸スクリューポンプ VQ型』
2軸スクリューポンプで“摩耗”を解決した当社が、次に目を付けた課題は“液体へのエア混入”です。チョコレートや味噌などの製造工場ではポンプで移送する際に混入した気泡が、品質劣化や成形時の不良の原因になります。クリームやジェル、シャンプーなどを製造する工場でも同様の課題を抱えていました。
また、液中に気泡が含まれていることで金属探知機が誤検知を起こし、安全な製品も処分しなければならなくなるという問題に頭を悩ませている工場もありました。
そこで開発したのが、『脱泡機能付き2軸スクリューポンプ VQ型』。このポンプはエジェクター又は真空ポンプにより真空状態をつくることで液中の気泡を除去します。もちろん、独自の“非接触”構造による無せん断、無脈動、無撹拌といった特長はそのままです。
上述した工場でも導入され、金属探知機の誤検知がほとんどなくなり、製品ロスが大幅に削減されたそうです。これまで脱泡機をラインに組込んでいた工場でもその工程をまるまるカットして、プロセスの簡素化、省スペース化を実現しています。
「伏虎にしかできないポンプを!」
お客様の声をヒントに、特長際立つ製品を生み出し続ける
特長際立つ製品ラインアップ
当社は、スクリューポンプの開発を契機に、お客様の多様なニーズにお応えする製品を提供してきました。直近では、脱泡機能付きポンプに加え、単体で複数の液体を混合しながら移送する『ブレンディングポンプ』も開発。このポンプも混合工程の省略により、大幅なコストカット・生産リードタイムの短縮につながっています。
これから、私たちが取り組んでいこうとしているのは“医療用医薬品でも使えるクリーン性の実現”と“1ミリ以下の細かな気泡の除去”。今後も、次なる課題解決に向けて開発の手を緩めることはありません。開発のヒントになっているのはいつもお客様の声です。「こんなポンプはないだろうか?」と思ったら、ぜひお気軽にお声かけ下さい。